金 山 の 野 鳥

「留鳥」・・・渡りをせず、一年中同じ場所にいる鳥。
「漂鳥」・・・国内を季節によって移動する鳥。
「夏鳥」・・・春に南の国から渡ってきて繁殖し、秋にまた帰る鳥。
「冬鳥」・・・北の国で繁殖し、秋に越冬のため渡米し、春にまた返ってゆく鳥。
「旅鳥」・・・日本より北で繁殖し、日本より南で越冬する鳥。春と秋の渡りの途中、日本に立ち寄る。
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1.カワウ  留鳥
 上野の不忍池のコロニーで有名な鳥である。近年、利根川などの内陸の河川でも、首をまっすぐ伸ばして飛ぶ姿が見られるようになってきた。金山探鳥会での記録も最近のことである。東京が棲みずらくて、出張してくるのかも知れない。数多く定住させてやりたいものだ。ちなみに、長良川の鵜飼いのウはカワウでなくウミウの方である。
2.カイツブリ 留鳥
  水鳥であるが、カモの仲間ではない。長手の沼、主に上の沼でよく見られた。地方によっては、「モグッチョ」と言われるように、水中にもぐっては全く別のところからヒョッコリ顔を出すしぐさがとてもユーモラスである。我々が子供の頃は、地元でこの沼のことを「つつみ「堤」」と呼んでいたのが、上の堤は南側が篠竹で覆われていて、探鳥会の初期の頃は、その藪の陰にカイツブリが浮き巣を営んでいたのを思い出す。静かな環境の中で鳴く「ピピピピピ」はとても哀愁を奏でるものがある。
3.ゴイサギ 留鳥
  サギと言えば、普通シラサギを連想するが、このサギはグレーで貴品が感じられる。それもそのはずで、「平家物語」に、醍醐天皇が「五位」の位を授けたとあることから名が付けられた。八瀬川や長手の堤でよく見られるが、ある時、民家脇の篠竹薮のてっぺんに止まっているのにはびっくりさせられた。しかも、茶褐色に白い星が散りばめられた幼鳥(「星五位」と呼ばれる)であった。かつて、怪我をしたこの幼鳥が私のところに運び込まれ、動物病院へ手当の依頼をしたことがあったが、恥ずかしい話、最初ゴイサギとは思えなかった。タカやフクロウなど幼鳥と成鳥とでまったく異なるものが多いが、ゴイサギもなんでこんなに変われるものかと不思議でならない。そう言えば、人間も何十年ぶりかの同窓会で会った昔の仲間が、誰であったか見当もつかない場合もあるので、無理からぬことかもしれない。

4.アマサギ 夏鳥
  この辺で見られるサギ種の中では最も小さい。夏羽の頭から胸にかけての橙色、これをかつての人は「亜麻色」と言ったそうだが、その美しさは見事である。サギ類は農薬等の影響から、昔と比べるとずいぶん減ってしまった。東武線に乗って東京に行くときは、いつも窓からサギ類が見られるかどうか楽しみにしているのだが、この亜麻色のサギが見られでもしたら、駅がなくとも降りてしまいたくなるような衝動に駆られる。集団で見られることもたまにあるのだが、コサギやダイサギなど真っ白なサギの中にポツンとアマサギがいる風景が絵になる。
5.チュウサギ 夏鳥
  ダイサギとコサギの中間の大きさのサギ。この地域では夏鳥である。金山探鳥会では、初期の頃長手地区の八瀬川辺りの水田で何度か見られたが、最近は、めっきり数が減ってしまった。田んぼが減ってきて、エサとなるカエルやザリガニなども少なくなってきたからかもしれない。
6.コサギ 留鳥
  文字通り小型のサギである。くちばしは一年中黒色で、夏羽では頭に長い飾り羽が出てよそゆきになる。他のシラサギ類との大きな違いは足の指が黄色いことである。そこで野鳥観察をはじめたばかりの初心者には、いつも足の指が黄色いかどうか見て確認してもらうことにしている。探鳥会では最もポピュラーなサギであるが、いつも単独のことが多い。飛ぶ時ハクチョウは首を真っ直ぐにして飛ぶか、サギ類は首を縮めて飛ぶ。前者がいかにも重そうなのに対し、このコサギなどは悠然として優雅さを持っている。これも昔のように、集団でなく一羽で飛ぶ姿が多いからかもしれない。近年は町中を流れる八瀬川のフェンスの上や高圧鉄塔に止まるのを目にする機会が増えて来た。
7.ダイサギ 留鳥
  シラサギ類の中では最も大きい。目にするとしたら、八瀬川周辺や長手の上、下の溜池であるが、可能性は低い。現在では、利根川、渡良瀬川のような河川、多々良沼のような湖沼でなければなかなかお目にかかれない。大きさを判断するには比較するのが手っ取り早い。ダイサギのとなりにコサギがいてくれれば、ダイサギがいかに大きいか、またその逆に、コサギが一羽ではかなりの大きさに見えてもダイサギと比較すると、本当に小型のサギであることがよくわかる。お色直しでもなかろうが、くちばしの色が冬羽では黄色、夏羽では黒色になる。シラサギ類の識別は誠にやっかいである。



8.アオサギ 留鳥
  日本のサギの中で最も大きい。金山探鳥会ではあまり期待できない。私の記憶でも、上空を飛ぶのを1〜2回見ただけである。太田に近いところでは、多々良沼に行くとかなりの数のアオサギが見られる。それも沼の水のあまりないところに立ち、何のためか数羽で同一方向をじっと見ているものである。日向ぼっこかもしれないし、単なる休憩かもしれない、こればかりは彼らに聞かなければわからない。


9.マガモ 冬鳥
  緑色の頭と黄色いくちばしをもつカモ。長手沼とくに上沼で見られることが多い。毎年1月15日の全国一斉ガン・カモ調査では北金井地区の溜池でもかなりの数が記録されている。「青首大根」を連想させるためか、俗にアオクビとも呼ばれている。光線によっては緑が紫にも照り輝き、カモ類全体が地味な中にあって、とても美しい。余談になるが、家鴨・・・アヒルは古くは「アヒロ」と言ったそうだ。語源は足が広いからだと言われているが、アヒルはこのマガモを人工的に飼育、改良したものである。
10.カルガモ 留鳥
  皇居前で一躍有名になったのはいつだったことか。一年中日本国内で暮らし、オスとメスが同じ色をしていて、くちばしの先が黄色い。初心者でも見分けやすいカモである。金山探鳥会のこれまでの記録では、1〜12月までいずれの月も観察されている。特によく見られるのは、長手沼に冬鳥として渡ってくるカモたちと共に見られる冬場と、田に水の張られる5〜7月ごろのようである。
11.コガモ 冬鳥
  日本に来るカモの中では最も小さい。文字通り「小鴨」である。カモ類、とくにメスでは色彩が複雑で覚えにくいものだが、このコガモのオスは頭がこげ茶の中にグリーンのベルトのツートンカラー、お尻が三角形のクリーム色と、とても識別しやすい。が、何よりもその鳴き声に特徴があり、池や沼にたくさんのカモがひしめいていても「ピリッ、ピリッ」と笛のような声が聞こえてくると、コガモがいるな、と思わずうれしくなってしまう。
12.ヒドリガモ 冬鳥
  ヒドリは「緋鳥」なので、オスでは頭が茶褐色で、てっぺんにクリーム色のベルトがある。金山探鳥会では、3月、12月に記録があるが、私の記憶では、どこで見られたか定かでない。おそらく長手沼であろう。この付近では利根川などでも見られるがさほど多くない。他の淡水ガモとちがって海上に群れで出てしまう傾向が強いようだ。地味ながら他のカモに混じっても存在感のあるカモ。
13.オナガガモ 冬鳥
  ピンと張った長い尾羽と胸から腹にかけてが白だから、一度見たら忘れられないカモである。数も結構多くて、長手沼でもよく見られる。越冬ガモのメッカである東京の上野不忍池では、7割近くがこのカモで占められるほどだ、その不忍池で何年か前に、白い胸をオレンジ色に塗り研究用とされたことがあったが、尾島の利根川でカモの中にオレンジ色を見つけ、思わずよく来たな、ご苦労さんと声をかけたくなったことがある。
14.ホシハジロ 冬鳥
  ホシハジロは「星羽白」で何ともロマンチックな名ではある。茶色の頭、黒い胸と色彩がはっきりしている。探鳥会では、一度12月に記録がある。カルガモ、マガモやコガモが淡水ガモであるのに対し、このホシハジロは海ガモの仲間である。それらの特徴は、@浮いているとき、尾羽は水面につけている。Aエサをとるとき、全身でもぐっている。B飛び立つときは、ハクチョウのように水面を助走するなどである。
15.ミサゴ 留鳥
  魚をエサとするワシ・タカの仲間で大きさはトビと同じ位。よくタカとワシは違うのかと聞かれるが、両方とも同じ仲間に入る。タカ目の中にタカ科とハヤブサ科があり、このミサゴ、トビやオジロワシ、カンムリワシもタカ科にふくまれ、大きく見ればタカ目ということになる。が、一般的には、体の大きいものがワシ、中・小型のものがタカと呼ばれているようだ。ミサゴはその習性から金山周辺ではほとんど見られないが、ハクチョウで有名な多々良沼では時たま姿を現す。かつての探鳥会で湖上を悠然と飛ぶ姿を見たことがあるが、他のタカと比べて白っぽく感じられた。
16.ハチクマ 夏鳥
  トビよりやや小さいタカの仲間。ハチの幼虫やさなぎを好んで食べるのでこの名がついた。ハチの毒は大丈夫かと心配になるが、人間と違って免疫をもっているらしいからよくできたものだ。10月に南の国へ戻る渡りの途中飛ぶ姿が見られた。
 渡りといえば、愛知県伊良湖岬は、毎年10月10日前後、全国からサシバ等のタカ達が集結するが、サシバの中にこのハチクマが混じっているのを、首が痛いのを我慢しながら探し出したものだ。全体が黒っぽく感じられ、凛々しさを漂わせていた。芭蕉もかつてはここを訪れ、「鷹一つ見付けてうれし伊良湖崎」と詠んでいる。
17.トビ 留鳥
  「トンビがくるりと輪を描いた」とか「トンビに油揚げをさらわれる」などと、昔から馴染みの深いタカ。他の種類と違い、尾羽の先が三味線のバチ型をしているのが特徴である。留鳥であるので、金山では1〜12月まですべて記録されている。鳴き声の「ピーヒョロロ」がウグイスの「ホーホケキョ」同様広く知れわたっているので、参加者の見落としならぬ聞き落としが少ないせいかもしれない。黄金色に実った稲を背景とした「ピーヒョロロ」は秋の深まりを演出していて好ましい。
18.オオタカ 留鳥
  後述のハシボソガラスくらいの大きさ。「鷹狩り」で利用されてきたタカである。太田では、市重要文化財「鷹匠埴輪」(6世紀後半)がある。左腕に、丸い目をした可愛らしいタカがとのっている。
 那須高原では、このオオタカの繁殖を守るため、野鳥愛好家が昼夜を問わず見張りを続け、テレビでも紹介され一躍注目された。飛翔中、腹側の羽根は全体的に白っぽいのだが、飛行機が翼の向きを変えるように、飛びながら翻ると見事な銀白色に光りとても美しい。が、初夏に山を歩きながら、頭の上から「キッキッキッ」が聞こえてきた場合は、猛きん類の鋭さが伝わってくる。



19.ツミ 留鳥
  キジバトほどの大きさの小さいタカ。漢字でも「雀鷹」と表されるほどタカの中で最も小さい。金山探鳥会では、確か長手辺りで参加者の眼の前を横切った姿が観察された。10年程前になるが、県から委託を受けた野鳥生息調査で北軽井沢に行った際、別荘脇の池の前に、このツミが止まっていたのを思い出す。それ以後姿をはっきり見たことはない。まさに「罪な」ツミではある。
20.ハイタカ 漂鳥
  ツミよりは大きいが、他のタカと比べればはるかに小さい。タカを観察するのはほとんど高度のある空である。したがって広い範囲の中の一点であるため、双眼鏡や望遠鏡でとらえにくいし、ずっと見ていると首も疲れてしまう。タカのような猛きん類が大好きという人もけっこういるが、私はどうもこの手のものは苦手であるし好きになれない。正直いって識別の難しさもある。だいたいタカが見つかるとベテランの人を中心に種類決めがはじまるのだが、何せ遠い距離のこ図鑑のようには判断できない。よっぽど自信があるものは別として、他のベテランに任せることにしている。それこそタカ見の見物を決めこむのである。
21.ノスリ 漂鳥
  トビよりも小さくてハシブトガラスくらいの大きさ。オオタカやハイタカと違って茶色味を帯びている。黒い斑紋があるので、初心者にも分かりやすい。少なくともトビよりは男前だと思うのだが、昔から「マグソダカ」などと呼ぶ人もいるし、漢字でも「狂鳥」と書かれるなど、本当にかわいそうだ。冬には結構見られる。ノスリをはじめとして、金山周辺でのタカ見の適地は長手のこどもの国上空や山頂の中島記念公園などである。
22.サシバ 夏鳥
  ハシボソガラスぐらいの中型のタカ。名前が「サシバ」なので「差し歯」を連想させるが、漢字で表すと「差し羽」である。野鳥には歯がなくて、それに代わるものは、体の重心近くにある「砂のう」である。つまり、クチバシでとらえ砂のうで食物を砕く。
 日本で繁殖し、また秋には東南アジアなどへ帰っていくのだが、愛知県の伊良湖岬では、毎年10月の体育の日前後に、一日何千羽ものサシバが集結し、蚊柱ならぬタカ柱がてきるが、誠に壮観である。金山では、かつて、こどもの国のサマー・ボブスレー辺りの松林に営巣したことがあるが、最近では姿もみられなくなってしまい残念だ。鳴き声は「ピックイー」で覚えやすい。
23.チョウゲンボウ 留鳥
  ハヤブサの仲間であるが、かなり小さい。この仲間は飛翔中タカ科と異なり、翼の先がとがるのが特徴である。舞い上がった後、ヘリコプターのように長い停空飛翔をしながら地上の獲物を探している。営巣に建物の隙間を利用することもあり、10年位前だったか、利根川近くの給水塔に巣をかけたこともあった。
24.ハヤブサ 冬鳥
  ハシブトガラス位の大きさ。頬に歌舞伎役者のような黒い班があるので、木などに止まっているときすぐ見分けがつく。金山探鳥会では、いつも参加者近くの低空をあっ、という間に飛び去ることが多い。飛行機の名前になったり、時代劇の主人公になったりと、魅力を備えたタカである。
25.ウズラ 留鳥
  卵で有名なキジの仲間。丸くずんぐりしている。金山探鳥会では5月の記録がある。環境のせいか、見られる可能性は極めて低い。私も伊勢崎の利根川探鳥会で、草原のまわりを「ピューピュー」と鳴きながらヒョコヒョコ歩く姿を見たぐらいである。
26.コジュケイ 留鳥
  キジバトより小さめだが、ずんぐりとしたキジの仲間。大正年間に中国から輸入し、東京、神奈川に放鳥したものが自然繁殖して広がった。鳥の声を人間の言葉に当てはめることを「聞きなし」といい、コジュケイのそれはかなり強い調子で「チョットコイ、チョットコイ」である。が、声につられて行っても竹藪の中をガサゴソ逃げていくだけで、姿はなかなか見られない。だが、運良くメスがヒナを数羽連れて歩くのを見られたときは、いつ見ても微笑ましく感じられる。
27.キジ 留鳥
  ご存じ日本の国鳥である。が、また狩猟鳥でもある。だから、キジからすれば、「酷鳥」なのである。そこで、繁殖期にオスが「ケーン、ケーン」とけたたましく鳴く声も悲痛の叫びなのかもしれない。コジュケイに比べると、割に畦道などに出てくる時節があるので、お目にかかれる機会が多い。
 オスは全身を着飾っていてとてもきれいだが、メスも、オシドリのメス同様、地味ながら捨て難い魅力がある。



28.クイナ 冬鳥
  「水鶏」と書くように水田や湿原など水辺の湿った場所に生息する。尾が短く体の割に足は大きい。最近では、本家本元のクイナよりも、昭和55年に沖縄で新発見されたヤンバルクイナの方が有名になってしまった。太田では、館林、板倉などのような湿地が少ないのであまり観察されない。
29.ヒクイナ 夏鳥
  顔から胸、腹さらには足も緋の(赤い)水鶏。今から10年以上前の9月に、三枚橋病院前の水田の中に1羽見つけた。青く短い稲穂の間を隠れるようにエサさがししていたのを思い出す。この辺りに定住することは先ずないので、参加者全員拝むように見入っていた。

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